こんばんは、Marloweです。
暑い夏や終わらない雨、あとその他いろいろなことで平穏な日常が遠ざかって久しい昨今だけど、先日はひさしぶりに映画館へ行ってきた。
観たのはこれ。
普段はほとんど邦画観ない派のMarloweがなぜ観たかと言うと、
この3点が理由。
で、その結果──100点満点でした。
予告は割ととっつきやすくて分かりやすいようなストーリーを匂わせているけど、実際に観ると「何でも鑑賞するよ〜的な体力」のない人はまぁ寝るだろうという心地よさ(?)がありまして、まぁ要は多くのビギナーには「眠い」「長い」であろう180分なので100点はないかなぁというところですが、本来アートって「これが良いものだ」「これがベストだ」という自己表現だろう?とも思うわけで、180分だろうが何だろうがこれは盛り込むんだ、お前ら全部観ろ!これこそ完成形だ!という引っ張る系のスタンスは好感が持てるしそれこそアートだと思うし、近年の日本にありがちな大衆迎合的な風潮──「作りたいもの」ではなく「観られそうなもの」を優先する作品づくり(「こういうのが観たいんでしょう?ほれほれ」ってすり寄ってく感じ)とは一線を画する、すばらしい作品なのではないかなぁ、というところで100点よ、100点(長い)。
とりあえず振り返ってみましょうか。
(ネタバレを含む可能性がありますのでご注意を。)
濱口竜介監督
邦画をほとんど観ない私なので日本人監督にはあまり明るくないのですが、濱口監督のことはこの作品で知りました。
……おっ、こ、これね…ってリアクションになってしまうかもですが(!)
悪意で満ちたサムネで失敬。。 いや、いわゆるキャストの話題ではなくて、作品として総合的に注目して鑑賞した経緯があります。
(ちなみに、唐田えりか氏は女優としてとても期待できる逸材だと感じました。)
素晴らしい作品でしたよ、ほんとに。
そんな期待する濱口監督の新作ということもあったので観に行きました。
村上春樹が原作(みたいな感じ)
村上春樹、とタグのついたものはとりあえず手に取るという生粋のハルキストですので、観ないわけにはいかないのです。
通奏低音みたいなものはあるけど、別に新鮮味もないし「うまくまとまってるなぁ」という印象くらいにしか覚えてなかった短編集ですが。
見に行く前に読み返すということはしませんでした。
結果的に、この短編集のなかからいくつかの短編をピックアップしてミックスしてアレンジしたのが今回の映画版『ドライブ・マイ・カー』でした。
映画化映画には色々とがっかりさせられることがしばしばあるけど、今回の作品は越えてたというか、これはこれで独立した素晴らしい作品でした。
春樹っぽさはなかったかな、良い意味で。
3時間という長さ
2時間だとまとまり過ぎててあんまり好きじゃないのです、ただそれだけ。
しかし!今回の3時間はちょっと長かった。
贅沢な長さなので苦痛ではなかったけど、万全のコンディションで挑まないとほぼ寝ます。
あー、気持ちええな、寝ようかな、、と思ったのはここだけの話。
シンプルなメッセージを響かせる難しさ
この映画のテーマは至極シンプルで、「言葉のちから」とか「がんばって生きよう」とか「まるっと受け入れよう」とか、そういう感じなんです。
こういう基本的な(でも多くの人ができない)ことを伝えるのって、難しいんですよ。
行政が作った啓発ビデオみたいに成り下がって、「だから?」となるのがオチなのです。
でもこの映画は、超絶遅いスローボールが無重力空間でまーっすぐ飛んできて、最後の最後にキャッチしてみれば異常なくらいボールが重くてびっくりするような、そんな感じで響きました。
村上春樹の物語を紹介するときに使われがちな表現を用いると、「喪失を抱えた人」にはぴったりの作品です。
この映画を一言で表すとずばり、「癒やしと救済」です(二言じゃん)。
特に岡田将生が素晴らしかった
あるシーンで、延々と岡田将生がセリフを続けるところがあるんですが、これほどまでにただセリフを言うシーンで響いたのは、この作品が初めてです。
いやー、衝撃的な1シーンでした。Marlowe的映画史に残るシーンです。
物語の展開に頼りがちな最近の映画産業ですが、言葉ってやっぱり大切だよなぁとしみじみして、カンヌの脚本賞に納得しました次第です。
音楽がまた素晴らしかった
本作の音楽については、ここに詳しく書いてあるので自分からの紹介は割愛。
これをちゃんとした音響設備で聴くためにも、ぜひとも映画館で鑑賞いただきたいです。
自分に集中しよう
「他人とか、何かがわかないときはより一層、自分に集中しよう。」
Marloweのモットーとしてきたことをエッセンスとして描いてくれていた本作にはたくさんハッとさせられた。
しっかり自分の車を運転しようぜ、っていうタイトルはずるいくらいぴったり。
自分の奥深くにすーっと潜る体験ができる、大変すばらしい映画でしたとさ。