008冊目『アフォリズム』

おはようございます。Marloweです。

3月も残すところあと1週間。季節と環境の変わり目でどうしても精神的に厳しくなりがちなこの時期ですが、今回はそんな心にじわっと染みる言葉をいくつか紹介したいと思います。

今回ご紹介する本はいわゆる名言集ですが、本書は常に本屋に平積みされているような薄っぺらいそれらとは一線を画した良書であります。著者のロバート・ハリス(公式ページ)はラジオDJ、作家として活動している人です。すごく良い声を持った、教養ある超絶イケてるおじさんです。こういう人は何歳になっても女性を口説けるだろうなって思います。いや、羨ましくはありませんよ。ええ、もちろん。

アフォリズムとは何か

この『アフォリズム』という言葉にあまり馴染みのない人のために、本書で説明されている部分を引用します。

語源はギリシャ語で、人間についての心理や戒め、恋愛や人間関係についての教訓、人間の愚かさや可笑しさ、人生の不思議や矛盾などを端的な言葉でうまく表したものを言う。

ロバート・ハリスアフォリズム』(p.6)東京:NORTH VILLAGE, 2010年

冒頭でも触れましたが、本書は他のいわゆる名言集とは一線を画しています。どのあたりが、というと、要は「名言」とか「座右の銘」といった啓発的なニュアンスの言葉が集まったものではなく、もっとオールジャンルなものの集まりであるということです。そこには「ん?」と首を傾げたくなるような名言(迷言)もありますし、教訓なんてなくてただただ笑える名言もあります。

また、巷に溢れる名言集においては、ついその言葉だけが先行してしまいがちで中身が伴っていないことがよくありますが、本書はその名言の意味だけでなく、その言葉を発した人物の人となりや人生についても説明されているので、教養というか知識の集まりとして、非常に豊かな勉強ができる本であります。

ちょっと紹介しちゃう

まあどれほど良書だと言っても、名言が525もあって、ページ数にして約400ページはありますから、そう簡単に通読はできません。あまり読者の多くないこのブログですので、私が気に入った名言をちょこっと引用して皆さんに紹介してしまいます。気に入った方はぜひとも買って読んでください。

ということで、紹介しますよ。こんな名言をさらっと言えるおじさんになれればとは思いますが、私自身は人に対して押し付けがましく考え方を述べたりするのが苦手(というか人のことを変えることはできないと思っている性質)なので、普段からぼそぼそとしていて、名言なんてとても吐けません。ただ、ユーモアは大切にしています。こうやって文章を書いているだけではどうにもこうにも表現できませんけれども、一応は。

さて、早く紹介しろよってところですよね。以下、色分けに意味はありません。

  • Never give up, because it ain't over 'til it's over. Yogi Berra
    絶対に諦めるな、終わるまで終りじゃないんだから。 ヨギ・ベラ

    彼はメジャーリーグヤンキースで活躍した名捕手です。ガッツ石松的なところがあって笑えます。こういう「?」という笑える言葉が大好きです。なので、もう一つご紹介。
  • Baseball is 90% mental, the other half is physical.
    野球は90%精神力で、残りの半分は体力だ。

    ちょっと何言ってるかわかりません。こういうことを大真面目に言う人は憎めないですね。
  • A woman's most erogenous zone is her mind. Raquel Welch
    女性のいちばんの性感帯はその心よ。 ラクエル・ウェルチ

    彼女はアメリカの女優で、いわゆるセックス・シンボル。『20世紀最高のグラマー』と称された人ですが、ううん、まあそうだろうなと。その肝心の心を愛撫するのが難しいんですがね。
  • Marriage is a romance in which the heroine dies in the first chapter. Cecilia Egan.
    結婚は第1章でヒロインが死んでしまう恋愛小説である。 セリーナ・イーガン

    彼女はオーストラリアの童話作家です。こういう表現って日本語ではあまり響かないかもしれませんが、こういうのにクスクスっと笑ってしまいます。
  • Woman was God's second mistake. Friedrich Nietzsche
    女は神の2番目の間違いである。 フリードリッヒ・ニーチェ

    もちろん1番目は男なのですが。女性蔑視は良くないですが、教養あるニーチェがそれを尊重しつつも、自らの女性嫌いを表現するとこの言葉になりました。相当頭が良くないと出てこない表現ですねこれは。
  • The lower one speaks the cleser a woman listens. Marcel Achard
    声を落として話せば話すほど、女性は耳を傾けてくれる。 マルセル・アシャード

    フランスの劇作家で脚本家。これは私のなかで深く刻まれている教訓の一つです。実践してみるとわかりますが、声を大にしてはいけないとつくづく思います。
  • To be happy with a man you must understand him a lot and love him a little. To be happy with a woman you must love her a lot and not try to understand her at all. Helena Rowland
    男と幸せになるには彼のことをいっぱい理解してあげて、少しだけ愛してあげること。女と幸せになるには彼女のことをいっぱい愛してあげて、理解しようなんて思わないこと。 ヘレナ・ローランド

    これは非常に大切なことですよね、うんうん。
  • The love we give away is the only love we keep. Elbert Hubbard
    人に与える愛だけが、手に残る愛である。 エルバート・ハバート

    深い。訳も絶妙。
  • You know it's love when you want to keep holding hands even after you're sweaty. Anonymous
    手が汗ばんできても手を握り合っていたかったら、それは愛だ。 作者不明

    ロバート・ハリス曰く「どんな甘っちょろい愛の讃歌よりも恋する気持ちを的確に突いている」ということですが、ううん、そうですよね。

こんな感じでしょうか。お気に召す名言はありましたか? ※英語のタイプミスがあったらすいません。

こういういわゆる名言集で取り扱われるのはもっぱら海外の著名人ですが、本書の良いところは、英語に精通した著者ならではの翻訳にあると思います。言葉が翻訳という壁を乗り越えるとき、しばしばそこに含まれうるニュアンスや意図を失いがちですが、著者はそのあたりにも気を配っていて、この動詞はこういう意味もありますよ〜てな具合で、他の解釈にも言及してくれている。こういう気が利く人ってモテるんだよなあ。

マントラのようにつぶやきつづけること

最後に一つお話を。

マントラ、というのは賛歌や祈りなど宗教的な意味を持つ短い単語を抽象的に表したサンスクリット語の単語です。 日本語では「真言」と漢訳され、密教では仏や菩薩の教えや誓いなどを秘めている呪文的な語句とされています。

私はこのマントラという言葉が好きです。今日ご紹介できなかったほかにも、私にはいくつか心に刻まれている名言があります。それをマントラのように日々心のなかでつぶやき、大げさですが自分の行動規範としてインストールしているわけです。こうすることによって数多くの苦難を乗り越えてきた(またも大げさ)私からすると、本書のような本はまさに日常を変えてくれる救いの書だなあと、そういうことなんです。

みなさんのなかに新たな救いのマントラが芽生えていれば幸いです。それでは良い1日を。